【観国之光 374】インバウンド再開の動き 実証事業の成果に注目 本社論説委員 内井高弘


町が外国人でにぎわう日がいつになったら来るのだろうか(かつての飛騨高山)

 新型コロナウイルスの感染拡大で、訪日外国人観光客(インバウンド)が姿を消して数年がたつ。観光業界に大きなダメージを与えたが、ようやく落ち着きを見せ始めている。

 例えば、東京都内の23日の感染確認は1週間前の月曜日より約350人少ない2025人で、10日連続で前の週の同じ曜日を下回った。感染再拡大の不安は尽きないが、このまま収束に向かうことを願うばかりだ。

 政府は先ごろ、新型コロナの水際対策の緩和を発表。6月1日から、1日当たりの入国者数の上限を今の1万人から2万人に引き上げることにした。ただ、これはビジネス関係者や技能実習生などが対象で、観光目的の入国は依然として認めていない。

 観光業界はかねてから、水際対策の早期緩和を政府に働き掛けてきた。外国人の観光目的の入国に関しては「認めていない国は中国と日本など極めて少数」と指摘した上で、「誘致競争に負けてしまうどころか、やがては世界に必要とされない『観光孤立国』となりかねない。インバウンドの復活は経済のV字回復にとって重要なポイントだ」として、早期再開するよう求めた。

 感染状況の改善傾向と観光業界の一連の活動が奏功したのか、政府も観光目的の外国人受け入れ再開へ動きだした。

 斉藤鉄夫国土交通相は17日の会見で、「訪日観光再開に向けて必要な材料を収集するため、5月中にわが国の旅行会社が行動管理を行う、小人数のパッケージツアー形式での実証事業を実施することにした」と述べた。

 対象となるのは、変異株の感染状況が比較的落ち着いている米国、オーストラリア、タイ、シンガポールで、ワクチンを3回接種した人という。

 ツアーは24日から始まっており、15組計約50人が最大7泊8日の日程で千葉県や長野県、大分県など12県を旅行する。

 事業を通じ、感染防止対策を外国人にどう守ってもらうか、感染者が出た際の対応などについて検証し、ガイドラインを策定。旅行会社や宿泊事業者に周知する予定。

 観光業界は再開に向けた動きをおおむね歓迎。旅館関係者は「一気に再開とはならないだろうが、明るいニュースであることは間違いない。インバウンドを見込んで設備投資もしてきただけに、ようやく報われる」とホッとした表情だ。

 一方で、マスクをしないで行動する外国人が増えることを警戒する声もある。マスク着用がまだ当たり前の日本にあって、マスクなしでの行動には厳しい目が注がれ、外国人が嫌な思いをすることも想像に難くない。どうルールを定めるのか、実証事業の成り行きが注目される。


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